2015年06月23日

最近のパタンナーお仕事状況

4月の下旬、以前にも何度かお仕事させてもらっていたTAFE(州立の専門学校)の学生さんY君からお仕事の依頼。
彼はまだ学生ではあるけれど、すでに自分のブランドをスタートさせていて、その次期コレクション用のパターンをすることに。
「次のコレクション用に、新しいパンツとドレス(ワンピース)の原型を作りたい」なんていうから、てっきりそれだけかと思っていたら、その後どっぷりコレクション用のパターンに関わることに・・・。

まあその時は特にそれ以外のパターン仕事もなかったから良かったのだけど、午前中クリーナー仕事したあと在宅でパターン、土日はTAFEか、Y君が居候しているガールフレンドの家へ行って、そこで一緒に仕事、などなどで2週間休みがなかったときはちょっとしんどかった。

彼のデザインは独創的で、パタンナーとしては大変だけど面白い。
インターネットから誰かのファッションショーの写真を取って(盗って)きて「Copy exactly(そっくりそのままコピーして)」なんていう、どっかのブランドのデザイナーとはえらい違いだ。

しかし独創的な分、小売店側としては売りにくい(消費者受けしそうにない)とみられるらしく、「去年のコレクションは写真に撮っただけ」と言ってました。めぼしいお店に置いてもらうようY君自身が、自ら頼んで歩いたらしいのだけど、どうやら1点も売れなかったようで・・・。
まあ、黄色とシルバーなんていう、色の組み合わせが着づらいとか、肩にスティックが刺さってるデザインが実用的でないとか、要因はたくさんありそうだけど。
個性を追い求めるのもいいけれど、ビジネスとしても成り立たせないとねえ。売り上げがないと次のコレクションが作れないってことになるし。

コレクション作成の合間に、シドニーのデパートDavid Jones(日本のお店に例えるなら伊勢丹くらいかなあ)の、紳士服売り場で販売員のアルバイトをしているけれど、それも時給$21だとかで、私のクリーナーの時給$23より少ない。

でも中国の工場に特別に依頼して、袖全体にびっしりビーズ刺繍の入ったものを作らせたり(写真を見せてもらったけど、甲冑って感じだった)、シルクを反物で取り寄せたり(まあ送料払ってもシドニーで買うより格段に安いらしいのだけど)、作業を手伝ってくれるクラスメイトにもちゃんとバイト代を払ったりしてる。
私のお仕事代も週単位ですぐ払ってくれる(オーストラリアでは基本的に給料は週払い)。3か月も待たされた、どっかのブランドとは大違いだわ。
それでいったいどうやって資金をやりくりしているのやら。ブランドを運営するというのはとてもお金がかかるはず。特に、知名度がある程度できて、一定数のお客さんがつくまでは。

それにしても感心したのは、卒業コレクションからかれこれ2年近く彼の制作に関わっているけれど、着実にパターン技術が上達していること。
元々「まともにできるのはパターンだけ」と言っていたくらいだから、他のファッション学生や、自分でパターンもする駆け出しの若いデザイナーたちと比べても「結構ちゃんとしたパターン引くなあ」とは当初から思ってました。もちろん日本の基準からしたら雲泥の差だとは思うのだけど、海外でパターン仕事をしていて、とにかくパターンが読めない(解読できない)というのがとても困る、しかしよく起こる事態で、とくに仕上がり線がないパターンが多いから困る。それどころか地の目線もなけりゃパーツ名もない、CB(Centre Back=後ろ中心)やCF(Centre Front=前中心)も分からないようなのがほとんどだから、その点Y君のパターンは、カーブが多少おかしいとか、ノッチが合わないとかそういうのはあっても、とりあえず無理なく理解できるパターンなので、それだけでも随分時間と労力の節約になるし、つまりは仕事しやすくて助かってました。
おそらく当初は学校で習ったままの原型を使っていたのだろうけど、それを製作を重ね、モデルフィッティングを通して修正を重ねるうちに自分なりの原型を作り上げていったらしく、この2年で見違えるくらいにいいパターンを引くようになりました! 生徒の成長を見守るような気持ちで私も嬉しいぞ。

まあそれでも、この前「このイセ、どうしたらいいと思う?」なんて、ジャケット原型の脇線に1.3cmも入っているイセについて相談されましたが・・・。
バストダーツを減らす時、先生の言うままに、袖ぐりに逃がした残りを脇線のイセにして残したらしいのだけど・・・。「これはどう考えても間違ってる」と説明して、1/2を袖ぐりでカットし、あとの1/2を裾に逃がすようアドバイスしました。
「先生がこうするように言ったから・・・。でもmiyukiの説明(イセはそもそもふくらみを作りたいところに入れるものだから、すっきり体に沿うよう仕上がるべき脇線にイセがあるのはおかしい)を聞いて納得したよ」と言ってくれましたが、海外では専門学校の先生が言うことはアテにならないからねぇ・・・。
この前も、「テーラージャケットの地衿の地の目は基本バイヤスだよ(渡されたジャケット原型の地衿(Base Collar)パターンが縦地だったから)」と言うと、「そうなの・・・!?」と、びっくりしてました。

こんな風に、Y君はパターンを含めた服作りの基本をちゃんと理解しているし、デザインに関してもパタンナー(私)の意見を取り入れて融通きかしてくれるし、支払いは素早いし(重要)、なによりパタンナーとその仕事(=パターンとかトワルとか)にちゃんと敬意を払ってくれる(とても重要)ので、仕事しやすいです。
彼の周りにいる人も、ガールフレンドをはじめとして、仕事を手伝ってるクラスメイトとか、フィッティングモデルさんとかもいい人ばかり。
いい人の周りには、やっぱりいい人が集まるなあ。私も、その中の1人だと嬉しいなあ・・・。

ちなみにY君はサウジアラビア出身のムスリム(イスラム教徒)なので、先日仕事した時は「今はラマダンだから食べられない」と言ってました。
ラマダンは1年に1回30日間、日の出から日没までは、食事はおろか、水分を摂ることもガムを噛むこともダメだそうで、「貧血の私はムスリムにはなれないなあ」とぼやいてしまいました。
普段はいろいろつまみながら作業するのだけど、この日はお茶を飲むのも気を使ってしもた。まあ彼にしてみれば毎年のことだし周りが皆ムスリムのわけじゃないから、気にしないのだろうけど。

6月も下旬になり、このコレクションの仕事も大詰め。あと2週間くらいで終わると思うのだけど、頑張ります。
posted by miyuki at 18:22| Comment(0) | PATTERN CUTTING | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。